Japan Propose
日本発国際提案
1 標準化に関連する用語
NWIP – 新作業項目提案 (New Work Item Proposal)
WD – 作業原案 (Working Draft)
CD – 委員会原案 (Committee Draft)
FCD – 最終委員会原案 (Final Committee Draft)
DIS – 国際規格原案 (Draft International Standard)
FDIS – 最終国際規格原案 (Final Draft International Standard)
IS – 国際規格 (International Standard)
PDTR – 技術報告書案(Proposed Draft Technical Report、
CDと同レベル)
DTR – 技術報告書原案(Draft Technical Report、FCDと同レベル)
TR – 技術報告書(Technical Report、ISと同レベル)
2 ISO/IEC JTC1 SC31の委員会構成(2014年当時)
SC31:Automatic Identification and Data Capture Techniques
WG1: Data Carrier
WG2: Data Structure
WG3: Cnformance
WG4: RFID(Radio Frequency Identification) for Item Management
WG5: RTLS(Real Time Location Systems)
WG6: Mobile Item Identification and Management
WG7: Security for Item Management
3 ISO/IEC JTC1 SC31
3-1 QRコード
ISO/IEC 18004 Information Technology
- Automatic Identification and Data Capture Techniques
- Bar Code symbology specification
- QR Code
QRコードの国際提案については、「QRコードの国際標準化」を参照のこと。(株)デンソーがQRコードを発表した1994年は、既にいくつかの2次元シンボルが、当時の自動認識業界団体であるAIMI規格として制定されたり、または制定作業中であったり、自動認識業界の標準シンボルとして普及の兆しを見せていた。そこで、QRコードもエーアイエムインターナショナル(AIMI)規格として制定することが重要と考えていた。ところが、1996年に自動認識技術の標準化を行う委員会であるISO/IEC JTC1 SC31が設立され、先行する2次元シンボルがISO標準を目指した。従って、QRコードも最終的にISO標準を目指した。そのために、まずAIMIの日本支部であるエーアイエムジャパン(AIMJ)の標準にし、AIMJからAIMIに提案し自動認識業界の標準シンボルにした後、SC31のタイプAリエゾンであるAIMIから、SC31に提案した。
QRコードがAIMI規格として制定された1997年はSC31で1次元/2次元シンボルの国際標準化作業が開始された時期で、当初は米国で開発されたPDF417、データマトリクス、マキシコードの3つの2次元シンボルがISO/IEC規格化作業の対象として提案されていた。QRコードはAIMI規格として自動認識業界の標準シンボルになったが、自動認識技術のISO標準化が始まったこともあり、QRコードも世界に共通するシンボルにするべく、ISO標準化に取り組んだ。1998年のリオデジャネイロのSC31総会でプレゼンテーションを行い、同年9月にNWIP/CDの同時提案を行い、1999年9月にFCD、2000年2月にFDISが成立し、2000年6月にISO/IEC18004として発行された。
このプロジェクトは自動認識の業界団体であるAIMJ、国際団体であるAIMI、SC31国内委員会の委員長である(株)デンソー、(株)デンソーが契約した米国、英国およびシンガポールのコンサルタントが協力して推進した。関連するドキュメントをGoogle Driveに提示する。
AIM: Automatic Identification Manufacturers Japan
AIMI: Automatic Identification Manufacturers International
3-2 マイクロQRコード
ISO/IEC 24719 Information Technology
- Automatic Identification and Data Capture Techniques
- Bar Code Symbology Specification
- Micro QR Code
マイクロQRコードはQRコードの標準化の過程でデータマトリックスとの比較で、コードサイズが小さい領域でデータマトリックスよりコードサイズが大きくなるという指摘を解決するために考案したものである。
2003年5月のSC31パリ総会にて日本よりマイクロQRコード関するプレゼンテーションを行った。このプレゼンテーションではQRコード規格(ISO/IEC18004)を改定してマイクロQRコードを包含する内容であったが、SC31国際議長の強い反対があり、要求によりNWIPとして提案した。2003年9月にNP/CD同時提案を行い、提案が通過後、2005年6月にQRコード規格(ISO/IEC18004)の改定が認められたので、規格提案を取り下げた。
このプロジェクトはSC31国内委員会の委員長である(株)デンソーウェーブ、(株)デンソーウェーブが契約した米国、英国およびシンガポールのコンサルタントが協力して推進した。関連するドキュメントをGoogle Driveに提示する。
(株)デンソーウェーブ:1976(昭和51)年設立。2001(平成13)年デンソーの産業機器事業部とシステム機器(株)、(株)デンソーシステムが合併し、商号を(株)デンソーウェーブに変更。自動認識関連事業がデンソーから移管された。
3-3 QRコードの改定
ISO/IEC 18004 Information technology
- Automatic identification and data capture techniques
- QR Code 2005 Bar Code Symbology Specification
QRコードの改定は主に、マイクロQRコードを包含し、QRコードモデル1を参考情報(Informative)として付属書(Annex)に移し、規定から外した。さらに白黒反転、表裏反転などにも対応した。ダイレクトマーキングを考慮してセル形状を正方形だけでなく、円形にも対応している。
QRコードの改定は2004年11月にNWIP/CD同時投票を開始し、2005年8月にFCD投票、2006年3月にFDIS投票を行い同年年8月に規格が発行された。規格名称を「QR Code」のままを主張したが、互換性がないことを理由に「QR code 2005」とするよう押し切られた。
このプロジェクトはSC31国内委員会の委員長である(株)デンソーウェーブが推進した。関連するドキュメントをGoogle Driveに提示する。
3-4 長方形マイクロ QR(rMQR)
ISO/IEC 23941 Information technology
- Automatic identification and data capture techniques
- Rectangular Micro QR Code (rMQR) bar code symbology specification
ISO/IEC18004 QR code 2005に規定されているマイクロQRコードの長方形バージョンである。円筒形製品などの細長いエリアへの印字やダイレクトマーキングを想定している。2018年11月にNWIPを行った。2019年6月に最初のCD投票、その後2回のCD投票を行い、2021年6月にDIS投票を通過した。今後は、ISO/IEC18004 QR code に統合してゆく予定である。
このプロジェクトはSC31国内委員会の委員長である(株)デンソーウェーブが推進した。関連するドキュメントをGoogle Driveに提示する。
3-5 モバイルORM
ISO/IEC 16480 Information technology
- Automatic identification and data capture techniques
- Reading and display of ORM by mobile devices
携帯電話に自動認識技術が搭載される最大の理由は,携帯電話の通信機能を使用したリアルタイム性(いつでも,どこでも)にある。このリアルタイム性がユビキタスネット社会に不可欠な要素である。携帯電話に搭載可能な自動認識技術は大きく2つに分けることができる.1つはデータキャリアを搭載することで、もう1つはデータキャリアのリーダ(カメラ機能)を搭載することである。データキャリアとしては1次元シンボル,2次元シンボル,RFIDおよびコンタクトレスICカードなどがある。
2007年6月のSC 31プレトリア(南アフリカ)総会で,米国からモバイルRFID設立のための代表者会議(Ad Hoc)の概要が説明され、Ad Hocの設立が承認された。2008年の6月に開催されたSC 31トロント(カナダ)総会では、Ad Hocの成果を検証し、WG6の設立を承認した。
WG6はRFIDを主体とした内容であったが、提案されたアプリケーションはすでに日本ではQRコードを用いて実現しているものが多かった。そこで,日本からモバイルQRコードを提案するために、2009年に経済産業省のプロジェクトを立ち上げた。プロジェクトは,モバイル機器に表示(液晶,有機ELなど)したQRコードの品質評価手法の開発およびモバイル機器内蔵カメラで紙に印刷したQRコードを読み取る場合の性能評価方法の開発を行った。2010年6月に日本からNP提案を行い通過したが、米国や韓国などからコメントが提出され、コメント対応のため2011年10月にタイトル変更およびスコープ変更をおこなった。
プロジェクトエディタは(株)デンソーウェーブと米国で行い、規格作成はWG1とWG6のジョイントで行うことになった。WDは2011年から2012年にかけて作成し,最初のCD投票は2012年9月に締め切られ、賛成多数で通過したが,液晶に表示されたシンボルの評価方法など全く新しい技術評価のため、いろいろな意見が提出され2012年から2013年にかけて、3回もCD投票を行った。日本としては,QRコードの評価だけで早く完成させたかったが、1次元シンボルやほかの2次元シンボルの評価など、多くの意見が提出されコメントレゾリューション(CR)に時間がかかった。2014年にDIS投票を行い、2015年8月に規格書として出版された。
モバイルORMは2009年から2011年に(株)デンソーウェーブがMETIより受託した以下のプロジェクトの成果を標準化したものである。このプロジェクトは(株)デンソーウェーブが推進した。関連するドキュメントをGoogle Driveに提示する。
*平成23年度国際標準開発事業 モバイルORM(光学的読取謀体)の品質評価仕様及び導入ガイドラインに関する標準化
ORM:Optically Readable Media
RFID:Radio Frequency Identification
METI:Ministry of Economy, Trade and Industry
CR:Comment Resolution
3-6 製品トレーサビリティ
ISO/IEC 15459-1 Information technology
- Unique identifiers
- Part 1: Unique identifiers for transport units
ISO/IEC 15459-2 Information technology
- Unique identifiers
- Part 2: Registration procedures
ISO/IEC 15459-3 Information technology
- Unique identifiers
- Part 3: Common rules for unique identifiers
ISO/IEC 15459-4 Information technology
- Unique identifiers
- Part 4: Unique identifiers for supply chain management
ISO/IEC 15459-5 Information technology
- Unique identifiers
- Part 5: Unique identification of returnable transport items (RTIs)
ISO/IEC 15459-6 Information technology
- Unique identifiers
- Part 6: product groupings
2003年5月のSC31パリ総会にてMETIよりユニークな識別コードのNWIPに関するプレゼンテーションを行った。その後、2003年7月にNWIP/CD投票を開始し、2003年10月にNWIP/CD投票は通過した。2004年2月にタイトル変更の投票を開始したが、同年5月にキャンセルした。
この間、NWIP/CD投票が通過したにもかかわらず1年近くも会議が開催されない。これはWG2コンビ―ナが規格に反対であり、会議をする意思がなかったからであった。そこで、2004年5月に開催されたSC31総会(Orlando, Florida, USA)で日本から異議申し立てを行い、早急なる会議開催を要求した。それに対し、SC31国際議長は2004年9月21日~24日にソウル(韓国)でWG4(RFID)の会議が行あり、関係者のほとんどが出席するのでその帰路に成田でバロットレゾルーション会議(BRM、25日~26日)を行うよう提案があり、日本側が対応した。当初のWG2コンビ―ナは流通系(GS1)の関係者であり、産業界系の製品コードについてはやりたくなかったようである。日本提案は流通系、産業界系および物流系で使用されているコード体系を包括するものである。特に、自動車業界や電気・電子業界で使用されている品番体系をそのまま変えることなく世界で唯一(ユニーク、固有)のコード体系にするものである。
成田での会議はプロジェクトエディタとセクレタリで進められたが、WG2コンビ―ナはその任務を降りると言い出した。急遽、日本からコンビ―ナを推薦することにし、投票の結果2005年1月に承認された。その後、規格開発は比較的スムーズに行われFCD投票、FDIS投票と進み、2006年3月に4規格(ISO/IEC15459-1、-2、-3、-4)が発行された。
その後も、規格開発は進展し、日本からISO/IEC15459-6を提案し、(財)日本情報処理開発協会(当時、JIPDEC)がプロジェクトエディタを務め2007年にISO/IEC15459-5と共に成立した。
このプロジェクトはMETI直轄の「商品トレーサビリティの向上に関する研究会」の成果をうけてSC31国内委員会委員長、JIPDEC/ECPCが米国のコンサルタントと共に推進した。関連するドキュメントをGoogle Driveに提示する。
*METI直轄「商品トレーサビリティの向上に関する研究会」
*平成14年度企業間統合基盤整備「トレーサビリティコンセプト調査研究」
BRM:Ballot Resolution Meeting
JIPDEC:日本情報処理開発協会、Japan Information Processing Development Corporation
ECPC:電子商取引推進センター、Electronic Commerce Promotion Center
3-7 ダイレクトパーツマーキング
ISO/IEC TR 24720 Information technology
- Automatic identification and data capture techniques
- Guidelines for direct part marking (DPM)
ダイレクトパーツマーキング規格はスキャンニングレーザ、ドットインパクト、インクジェット、サーマルトランスファーの各方式による印字およびそれに対する読み取り装置を規定するものである。2003年5月のSC31パリ総会にて日本より「製品、部品に対する2次元シンボルのダイレクトパーツマーキング」に関するプレゼンテーションを行い、2003年9月にNWIPが通過した。その後、2004年12月に1回目のPDTR投票、2005年9月に2回目のPDTR投票を行い、2006年2月に1回目のDTR投票、2007年の3月に2回目のDTR投票を行い通過した。2008年6月にISO/IECTR24720として発行された。規格化の過程で、各種のダイレクトマーキングを実験することにより、技術的知見を得ることができた。
ダイレクトパーツマーキングは2003年から2005年に(一社)日本自動認識システム協会(JAISA)がMETIより受託した以下のプロジェクトの成果を標準化したものである。関連するドキュメントをGoogle Driveに提示する。
*基準認証研究開発事業「製品・部品への二次元シンボルのダイレクトマーキング及び自動読取技術の標準化」
JAISA:(一社)日本自動認識システム協会
Japan Automatic Identification Systems Association
3-8 リライタブルハイブリッド(コンプレックス)メディア
ISO/IEC 29133 Information technology
- Automatic identification and data capture techniques
- Quality test specification for rewritable hybrid media
data carriers
リライタブルハイブリッド(コンプレックス)メディア(RHM)とは目視可能で印字と消字を繰り返すことができるリライタブルメディアと1次元シンボル、2次元シンボル、OCRやRFIDなどのデータキャリアを一体化したメディア(媒体)である。
2003年5月のSC31パリ総会で日本からプレゼンしたのが始まりである。SC31パリ総会の結果を受けRHMのプロジェクトは2003年から(国立研究開発法人)理化学研究所を中心に進められた。当初は産業界での使用を目的に、リライト回数の向上のための研究やリライトプリンターの開発が行われた。2005年までプロジェクトが進められたが、国際提案をするまでには至らなかった。2006年からは、枠組を変更し、JAISAが中心となってプロジェクトが進められた。2006年8月のWG3パリ会議、2007年5月のWG3ツールーズ(フランス)会議でのプレゼンを経て、2007年7月にNWIP提案を行ない、提案は承認された。プロジェクトエディタは日本が要請した英国と(株)リコーが分担した。2008年12月にCD投票、2009年5月にFCD投票、2009年12月にFDIS投票へと進み、2010年5月4日に国際規格(ISO/IEC29133)として発行された。この技術は日本独自技術((株)リコーと三菱製紙(株)の2社)であり海外に競合会社がないためスムーズに進捗した。
リライタブルコンプレックス(ハイブリッド)メディアは2003年から2005年にかけて理化学研究所が、2007年から2009年にかけてJAISAがMETIより受託した以下のプロジェクトの成果を標準化したものである。関連するドキュメントをGoogle Driveに提示する。
*中小企業基準認証研究開発事業「RFID(無線ICタグ)リライト複合媒体タグの標準化」(理化学研究所)
*平成18年度社会ニーズ対応型基準創生調査研究事業「書き換え可能な目視媒体の標準化」(JAISA)
*平成19年度社会ニーズ対応型基準創成調査研究事業「RHMの標準化に関する調査研究」(JAISA)
*平成21年度社会環境整備・産業競争力強化型規格開発事業「RHMの標準化に関する調査研究」(JAISA)
RHM: Rewritable Hybrid Media
3-9 RFIDミドルウェア
ISO/IEC 24791-1 Information technology
- Radio Frequency Identification (RFID) for item management
- Software system infrastructure
- Part 1: Architecture
ISO/IEC 24791-2 Information technology
- Radio Frequency Identification (RFID) for item management
- Software system infrastructure
- Part 2: Data Management
ISO/IEC 24791-3 Information technology
- Radio Frequency Identification (RFID) for item management
- Software system infrastructure
- Part 3: Device management
ISO/IEC 24791-5 Information technology
- Radio frequency identification (RFID) for item management
- Software system infrastructure
- Part 5: Device Interface
RFIDのリーダ・ライタやタグを動作させるための基本技術に関する規格は、ISO/IEC18000(エアインタフェース)、ISO/IEC15961(アプリケーションコマンド)等が、国際標準として2005年までにほぼ成立した。「RFIDシステム」として、産業界の各方面で利活用していく上では、RFID機器とアプリケーションの間をつなぐミドルウェア部分の在り方が重要である。2005年から検討が開始されたミドルウェアに関する国際標準を、日本の産業界、特に製造業におけるRFIDの利活用に十分適応し得る機能と性能を有する内容とするため、2005年末に(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)傘下にRFIDミドルウェア検討委員会を発足させ、RFIDのユーザメモリ領域へのデータ格納方法及びデータ管理方法について、RFIDのユーザ業界からの要求事項も踏まえて検討した。RFIDのユーザメモリ領域へのデータ格納方法及びデータ管理方法について、RFIDのユーザ業界からの要求事項も踏まえて2006年5月のSC31モスクワ総会でMETIからプレゼンテーションを行った。2006年6月にNWIP提案を行い、通過した。新しいソフトウェアシステム規格のため議論が伯仲し何度も原案の修正が行われた。最終的に2010年から2014年に規格が成立した。
ISO/IEC 24791-1 2010年
ISO/IEC 24791-2 2011年
ISO/IEC 24791-3 2014年
ISO/IEC 24791-5 2012年
RFIDミドルウェアについては、2003年から2005年にJEITAがMETIより受託した以下のプロジェクトの成果を標準化したものである。関連するドキュメントをGoogle Driveに提示する。
*エネルギー使用合理化電子タグシステム開発調査事業「RFIDミドルウェアプロジェクト」
JEITA:Japan Electronics and Information Technology
Industries Association
3-10 RFID機器が植込み型医療機器に及ぼす影響の評価方法
ISO/IEC TR 20017 Information technology
- Radio frequency identification for item management
- EMI impact of ISO/IEC 18000 series interrogator emitters on
implantable pacemakers and implantable cardioverter
defibrillators
日本では携帯電話が普及していく時に携帯電話の発生する電波が心臓のペースメーカや除細動器に影響を及ぼすことがわかった。最も影響を受けやすい心臓のペースメーカや除細動器(世界で約30種類以上)では携帯電話を15cm以内に近付けると影響を受ける(正常な動作が疎外される)ことがわかった。その後、万引き防止装置では実際にペースメーカが機能を一時停止したことが報告され、その影響を調べるために、万引き防止装置にも調査範囲が拡大された。万引き防止装置では最も影響を受けやすい心臓のペースメーカや除細動器がアンテナから25cm以内に近づくと影響(正常な動作が疎外される)を受けることがわかった。
日本では、万引き防止装置に引き続き、コンタクトレスICカードのリーダ・ライタ、RFタグのリーダ・ライタが調査された。UHFのリーダ・ライタではアンテナから75cm以内に、最も影響を受けやすい心臓のペースメーカや除細動器が近づくと影響(正常な動作が疎外される)を受けることがわかった。日本では、この事実がすべての心臓のペースメーカや除細動器を装着している人に通知された。万引き防止装置やRFタグのリーダ・ライタでは心臓のペースメーカや除細動器を装着している人にわかるように防止装置やRFタグのリーダ・ライタへのマーク表示が義務づけられた。
さまざまな報告書で、各種の電気・電子装置が、植込み型の心臓ペースメーカや心臓除細動器(ICD)などの能動型埋め込み医療機器(AIMD)に電磁結合(電磁干渉)を起こし、それによって時折不具合が起きる可能性のあることが指摘されていた。RFIDリーダ・ライタがAIMDに与える影響を検証するための方法には基準がなく、一貫性に欠けるというのが現状であった。
提案規格は電磁波が心臓のペースメーカや除細動器に与える影響の測定方法とRFIDのリーダ・ライタからの影響を緩和する技術を内容としている。この規格には、輸液ポンプや心電図などの医療機器への電磁波(電波)の影響は含まれていない。また、この規格では、現段階で必要なEMIリスクの調査やその削減に有用な基本的情報について述べ、実証的な電磁妨害評価の方法、およびRFIDリーダ・ライタがAIMD上に発生する電磁妨害への軽減策に必要な技術についても述べ、代表的な装置に対する実証実験の結果も紹介する。
「RFID機器が植込み型医療機器に及ぼす影響の評価方法」については、主に、SC31WG4SG5の会議でその規格化の必要性を訴えた。2008年から本格的に活動を開始し、2009年2月にNWIPを提出し、2009年10月にPDTR、2010年7月に2nd PDTRに進んだ。2011年2月にDTRに進み2011年12月に規格として発行された。この活動はWG4SG5が担当したが、日本がコンビ―ナを務めている。
「RFID機器が植込み型医療機器に及ぼす影響の評価方法」については、2008年から2011年にJAISAがMETIより受託した以下のプロジェクトの成果を標準化したものである。このプロジェクトでは心臓やペースメーカなどの人体モデルは北海道大学が担当した。関連するドキュメントをGoogle Driveに提示する。
*戦略的国際標準化推進事業/標準化研究開発「RFID機器が植込み型医療機器に及ぼす影響の評価方法に関する標準化」
UHF:Ultra High Frequency、300MHz - 3GHzの周波数の電波
ICD:Implantable Cardioverter Defibrillator、植込み型除細動器
AIMD:Active Implantable Medical Device、
能動型埋め込み医療機器